WEB小説 第2話(前編)、のその弐。

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――以下、続き。


★バックナンバー 


☆第1話 前編−??後編−??


☆第2話 前編−?





第2話 覇王は暴君の前に溺れる(前編)−?





3.エール


 


 ピンポンパンポン、と呼び出しを知らせるチャイムが鳴り、誰もがその後に続くであろう声を待った。


『生徒の呼び出しをします。1年3組の塩見健人君、一之宮和希君。至急生徒会室まで来て下さい。繰り返します――』


 その言葉に、誰もが驚いた。昼休みはもう終わる。なのに今から生徒会室に来いなどと、冗談にも程がある。


 行くのだろうか、と刃根崎が2人に視線を移すと、彼等は席を立ち、出口に向かっていた。


 必然的に授業は遅れる事になるが仕方が無い、と肩をすくめ、2人はやがて教室から姿を消した。


 去り行く背中を呼び止めようとも思っていたが、刃根崎はそれをしなかった。呼び止めてどうするのか、もしかしたら何もないのかもしれない。


 嫌な予感を振り払い、何事も無かったかのように授業の用意を始めていると、刃根崎の机の上に、誰かの手が置かれた。さら、とした黒髪がその上に垂れている。


刃根崎と視線が合った少女は、臆する事無く、更にじっと彼を見つめてきた。その視線に、刃根崎のほうがたじろいだ。まるで、全てを見透かされているかのように錯覚してしまう。


 動揺を殺し、低く呻く。


「余計なお世話かもしれないけど、彼等を追ってあげてほしいの」


 黒髪の女――女生徒はそう切り出した。


 何で、と問いかけようと思ったら、それは間髪入れず紡がれた言葉で遮られる。


「…言っても、信じてくれないかもしれないけど、私見たの。この前中庭で…生徒会長が、その…黒い龍を連れているのを…錯覚なんかじゃないわ。あれは確かに龍だったの。その時の生徒会長はまるで別人みたいで、普段の温厚な感じとは全然違って…何だか良く分からないけど、酷く嫌な予感がする。だって、こんな時間に至急呼び出すなんて、絶対おかしいもの。あの光景を見ていなければ、何とも思わなかったかもしれないけど、でも」


 まくしたてる女生徒は、いつしか教室中の注目を浴びていた。聞かされている刃根崎本人も、半ば呆然とその言葉を聞いていた。


「あの時の彼は、まるで人間に見えなかったから――」


 区切られた後、間を置いての言葉は、刃根崎の心に酷い衝撃を与えた。


 がた、と席を立つ。まだ話途中であろう女生徒は、驚いて言葉を切った。困惑している彼女に向かって頷き一つ。


「そうか…あんたの話で分かった。奴は恐らく人間であり人間ではない」


「え? え?」


 言っている意味が分からず、思わず周囲を見回してしまう彼女だったが、見回したところで何かが解決するはずは無かった。案の定、誰もがその意味を理解してはいなかった。


 そんな様子は気にも留めず、刃根崎は机の横に立てかけておいた木刀を手に取った。


 ――分かった。彼が自分の白き龍を見ても動じなかった理由が。彼も、自分と同じような物を持っている、だから動じなかった。至極単純な話だ。


「黒き、龍。昔聞いた記憶があるぜい。真実を、確かめてくる。言ってくれて、有難う」


 言ってくれた女生徒の頭を優しく叩くと、刃根崎は昼休み終了間際の教室から飛び出していった。


「あ、あのっ…刃根崎君なら、きっと頑張れるはずだから! 頑張って…!」


 背中越しに、そんなエールを受けながら。





 4.善と悪は紙一重





「失礼しまーす」


「失礼します」


 刃根崎が廊下を駆け抜けている頃、塩見と一之宮の2人は既に生徒会室の扉を開いていた。


 室内は明るく照らされており、少し眩しくも感じる。


 2人の視線の先に、目的の人物は居た。机に頬杖を付き、ようこそと彼は歓迎の言葉を吐いた。


「あの、一体何の用なんですかね」


 とっとと戻りたい一之宮は、愛想笑いを浮かべることもなく、単刀直入に言い放った。


 実のところ、塩見は生徒会長を好んでいたが、一之宮は彼を好んではいなかった。嫌いでもないが、何となく好きにはなれないでいる。 


 こびへつらおうとも、思わなかった。


 一瞬にしてピリピリしたものに変化した空気に、塩見が怯えるような目線で一之宮を見た。


 生徒会長は肩をすくめると、ようやくその椅子から重い腰を上げ、こちらへと近づいてくる。


 本来ならば、塩見と一之宮が近づくべきであるが、一之宮がその足を踏み出さなかった為、塩見もまた動く事が出来なかった。


 2人の元へ近づいてきた生徒会長は、何も言わなかった。


 只笑顔を向けていただけで――ぞくり、と背筋に悪寒が走った。足がすくむ。


 動けなくなった彼らに、手が伸びてくる。瞼を閉じる事も出来ず、やがてそれは両方の額に触れ――


「…っ」


 瞬間、がくり、と体が崩れ落ちた。何故か頭もぼんやりとしてくる。


 衝撃を感じたのはほんの一瞬。気がつけば、もう体に力も入らない。


 一体何をしやがった…! そう言ったつもりだったが、それはもはや声とはなっておらず、只空気が漏れているにすぎなかった。


 最後の気力を振り絞り、彼の顔を仰ぎ見た。


 やはり、彼は笑っていた。


「君たちに餌になってもらおうと思ってさ。それが用件だよ。刃根崎を、葬る…ね」


 最後の言葉を聴いた瞬間、一之宮は奥歯をかみ締めた。一体誰を葬るって?


 駄目だ。自分たちの所為で、彼が死ぬのは絶対にあってはならない。


 出来る事ならここへ来ないで欲しい。そう願う。


 だが無意識に、彼らは読んでしまっていた。


 声が出ない代わりに、互いが互いに同じ人物を心の中で呼んでいた。





 覇王、刃根崎。どうか、ここに――






★以下、第2話後編に続く。





只でさえ、明るくはない話が、どんどんと暗くなっております。


後半も、そして第3話も真っ暗です。光はあるのでしょうか?


それは私にも分からない。

コメント
この記事へのコメント
ぬお、いつの間にww



てか、いきなり急展開!

ツヤツヤして待つ!m9っ ゚д゚)
2006/05/04(木) 14:16 | URL | ぼぅ #79D/WHSg[ 編集]
>ぼぅさん

ひっそりとアップしておきました。



私もええー、と思うくらい急展開です。

あまり気にせずお待ちくださーい。
2006/05/05(金) 11:15 | URL | isamu #79D/WHSg[ 編集]
コメントを投稿する(原作つき作品において、出来るだけネタバレは遠慮いただけると嬉しいです。場合によっては削除させてもらいます)。
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